アプリを使って楽しく学べる!世界の金融教育事情
米国では約半数の州が金融教育を義務化!
近ごろ日本でも関心が高まっている金融教育。日本は海外に比べて金融教育が遅れていると言われますが、世界各国ではどのような取り組みがなされているのでしょうか?
本記事では、イギリス、アメリカ、オーストラリアの金融教育を紹介します。
イギリス:NISAのモデルとなった資産形成制度が充実
金融教育発祥の国とも言われるイギリス。日本のNISA(少額投資非課税制度)のモデルとなったのが、イギリスの「ISA(Individual Savings Account)」で、日本のNISAよりも15年早い1999年から導入されました。子どもの将来へ向けた資産形成を奨励するための個人貯蓄口座で、税制優遇がついた「ジュニアISA」も2011年に導入されています。
ISAには以下の4つのタイプがあり、投資経験やライフステージなどに応じて、自身で選択することができます。日本のNISAより選択肢が豊富なのが特徴です。
・Cash ISAs•••預金の金利が非課税になるタイプ
・Stocks and shares ISAs•••株式投資の配当益や売買益が非課税になるタイプ
・Iinnovative finance ISAs•••ピアツーピアレンディングネットワークを利用し、非課税利息を得ながら資金を貸すタイプ
・Lifetime ISAs•••初めてのマイホームの購入や、その後の生活のための貯蓄口座で18〜39歳の人が開設可能。年間1,000ポンドを上限に、政府が貯蓄に対し、25%のボーナスを上乗せ
ISAに預けられる金額は、税務年度によって変動します。2022/23年の場合、ISAに預けられる最大の額は20,000ポンド(約329万円 ※2023年4月時点)です。
金融教育も学校教育に組み込まれていて、学年ごとに体系別に学べるカリキュラムになっています。北アイルランド・スコットランド・ウェールズ・イングランドの4国で多少の違いはあるものの、3〜4歳頃から算数(数学)をはじめ、小学校修了時(11歳)までにはお金の計算や管理、予算の立て方や貯金、将来の計画と消費に関することを学びます。
中学校では、数学を用いてより複雑なお金の計算を学ぶなど、ステップアップしながら長期的にお金の知識を得ることができます。
アメリカ:州ごとに独自の経済教育を用意、約半数が義務化
リーマン・ショックを機に、金融教育の必要性が再認識されたといわれるアメリカ。その引き金となったサブプライムローン問題は、金融教育を受ける機会が少なかった層を中心に住宅ローンを貸し込んだことが発端の一つとされています。そこで、金融教育コンテンツの新開発だけでなく、学校教育などを利用しながら、情報をいかに必要な消費者に届けるかについても取り組んでいます。
とはいえ、アメリカの学校教育は各州に委ねられているため、統一したカリキュラムがないのが実情です。そこで、米国経済教育協議会(Council for Economic Education:CEE)というアメリカでの金融教育を推進する機関が2年ごとにアメリカの全50州とコロンビア特別区における金融教育の進捗調査を行い、webサイトで公開しています。
2022年度の調査によると、約半数の23州で“パーソナルファイナンス”と呼ばれる個人のお金や計画や管理に注力した金融教育の授業が義務付けられていると報告されています(※1)。また、必修となってはいないものの、金融教育をまったくしていない州はほとんどないことがわかります。
オーストラリア:5歳から金融リテラシーについて学び、実地体験も充実
オーストラリアもアメリカ同様、教育の内容は州ごとに委ねられています。しかし、2000年代の初めに自分名義でクレジットカードや携帯電話を契約するようになる18歳頃の若者が、最初の年に法外な負債を抱えるという事態が社会問題化。
こういった背景もあり、2005年にオーストラリア政府と8つの州政府等の大臣から成る大臣協議会で国民の金融リテラシー向上に国をあげて取り組むことが決定、2011年にオーストラリア証券投資委員会(ASIC)より国家金融リテラシー戦略が策定されるなど、金融リテラシーの向上を国家戦略として取り組んでいます(※2)。
学校教育では、5歳からは算数(数学)、英語、科学科目、10歳からは経済・経営科目において、金融リテラシーに関する学習内容が盛り込まれています。ASICが提供する「マネースマート・ティーチング」という教材では、寄付やペット飼育、海外修学旅行など実生活に直結したテーマで貯蓄や負債、家計管理を学べたり、遊園地開発という事業計画のテーマで資金調達や投資、収益といった概念に触れさせたりしています。
世界と比べて、日本の金融リテラシーは?
日本はほかの先進国と比べて、金融教育が遅れていると言われますが、実態はどうなのでしょうか。金融広報中央委員会が行った、18歳以上を対象にした「金融リテラシー調査2022年」によると、金融知識に関する問題では、「米国と比較すると、共通問題 6 問の正答率は、日本の方が 3%ポイント低い。また、英国・ドイツ・フランスと比較すると、共通問題の正答率が下回っている」と指摘しています(※3)。
さらに注目したいのは、「金融知識に自信がある人」の割合です。「金融教育を学校で受けた人の割合」は日本が7%、米国は20%と、アメリカがものすごく高いとはいえないものの、「金融知識に自信がある人」の割合では、米国は71%と高く、日本の12%を大きく上回っています。
こうしてみると日本は欧米に比べて遅れている現状ではありますが、家計の安定的な資産形成を支援するNISA(少額投資非課税制度)の恒久化・拡充が、2024年1月より実施されます。これにより日本でも“貯蓄から投資”の流れが加速し、金融教育の必要性がより高まることでしょう。
学校教育においても、2022年度より高校の家庭科の授業で金融教育が義務化され、家計管理をはじめ、預貯金、民間保険、株式、債権、投資信託といった金融商品の特徴や資産形成の視点も取り入れられるようになりました。貯金する以外にも運用で増やせると知る機会になる意味は大きいですが、授業時間数をみると限られたなかで実施されているため、まだまだ課題はありそうです。
アメリカ・イギリス・オーストラリアで注目の親子向けアプリサービス
一方、海外では金融教育のツールとして、親子で実践を通してお金の良い習慣が身につく、子ども向けFinTechサービスも先進国を中心に伸びています。FinTechサービスとは、アプリと連動し金融教育にもなる子ども向けキャッシュレス決済サービスのこと。キャッシュレス化が進み、リアルタイムに買い物データの参照や送金ができるようになったことで、現金ではできなかったさまざまな体験が実現されています。
・GoHenry (イギリス)
キャッシュレス化がいち早く進んだイギリスで2015年に誕生。利用者はすでに200万人を超え、毎年順調に成長しています。
子ども用のデビットカードと親向けアプリと子ども向けアプリが提供され、子どもが実店舗やオンラインショップなどでデビットカードを利用して買い物すると、親向けアプリにリアルタイムで通知されます。利用限度額の設定やギャンブルなど利用場所を制限できる機能など、ペアレンタルコントロールも充実しているので、安心して子どもの買い物を見守ることができます。また、親から子どものプリペイドカードにはいつでも送金ができ、決められた日にお小遣いを送金するといった設定も簡単です。
子ども向けアプリでは、金融教育をサポートする機能が充実。目標を決めて貯蓄する機能や、お手伝いなどのタスクを設定し子どもが実行するとお小遣いが稼げる家事リスト機能、慈善団体への寄付機能もあり、お金を稼いで管理することや他の人を助けることの価値などを体感できます。さらに、アプリ内でクイズや動画などを通じて年齢に合わせたさまざまな金融知識を学ぶことができます。月額料金は子どもに発行するカード1枚につき2.99ポンドです。
・ GreenLight (アメリカ)
2017年にスタートし、利用者は500万人を突破した人気のサービス。料金は利用サービス別に月額4.99ドルから14.98ドルの3つあり、家族5人分までデビットカードを作ることができます。基本的なサービスはGo Henryとほぼ同じ。
親向けアプリには買い物のリアルタイム通知や利用限度額や利用先を制限できるペアレンタルコントロール機能、子ども向けアプリには楽しく学べる金融教育のサポート機能や最大5%の利息が貯まる貯金機能、お手伝いをしてお小遣いを稼ぐジョブ機能、支援先を自分で選べる寄付機能などがあります。
特徴的なのは、子ども向けの投資機能。親がアプリを通して承認すれば、子どもはお気に入りの会社の株を1ドルから購入することができ、取引手数料はかかりません。実際に子どもがお小遣いのなかから少額を投資することで、将来に向けて運用の重要性を早くから体験することができるようになっています。
・Spriggy (オーストラリア)
2016年にスタートし、利用者は85万人以上。子ども用のプリペイドカードと親向け、子ども向けのアプリが提供され、子ども4名まで年間60ドルで利用することができます。親向けアプリにはリアルタイムの支出通知やお小遣いの自動支払い、緊急時の即時支払いをはじめ、アルコールやタバコ店などで使用できないよう、利用できるお店の制限があります。
子ども向けアプリには、有給または無給の仕事を設定して仕事が完了したら親が承認するジョブ機能や、貯蓄目標を設定して目標が達成されるまでロックされる貯蓄機能などがあり、スマートなお金の習慣を実践しながら学ぶことができます。
楽しみながら親子で金融教育!日本初の子ども向けプリペイドカード「シャトルペイ」
日本国内でも利用できる子ども向けFinTechサービスが、2022年7月に誕生した「シャトルペイ」です。Mastercard®加盟店で使える子ども専用のプリペイドカードと親向けアプリと子ども向けアプリを使い、親子で楽しみながらお金との付き合い方を学ぶことができます。
ここでは「シャトルペイ」を利用した、良いお金の習慣の身につけ方を紹介します
・自動で履歴がつくおこづかい帳機能
アプリ内に自動で買い物の記録が作成されて集計されるので、履歴が振り返りやすく、子ども自身で管理しやすくなります。
子ども自身が定期的に買ったものと使った金額を振り返ることで、「この買い物はちょっとお小遣いをむだにしたかな」「これはよく使うし、買ってよかった」など、賢い支出習慣が身に付きます。
・利用履歴のリアルタイム通知
子どもが買い物をするとリアルタイムで親向けのアプリに通知が来るので、子どもがお金を使う様子を見守ることができます。突然の高額出費など、トラブルの早期発見も可能です。
親も一緒に利用履歴を見て振り返ることで、お金の使い方について子どもにアドバイスすることができます。
・貯金の目標設定機能
子ども自身が貯金の目標を設定し、目標に向かって計画的に貯める経験を通して、貯蓄習慣を身につけることができます。
親は子どもの興味やがんばりを知り、貯金の応援するなど、親子のコミュニケーションのきっかけをつくります。
・報酬性でおこづかいがもらえる仕事機能
働くことを通してお金を得る経験ができるのが仕事機能。「お手伝いをしたら○○円」など、仕事内容と報酬を決め、達成したらおこづかいとして送金することができます。
親子でルールを相談し実践することで、子どもの主体性を育み、働くことの価値を実感することができます。
「シャトルペイ」の使い方をもっと詳しく知りたい方は、こちらをチェックしてみてください!
シャトルペイの使い方
※1 Council for Economic Education(2023) “SURVEY OF THE STATES”
※2 一般社団法人全国銀行協会(2018)「国民の安定的な資産形成に資する 金融経済教育の推進に向けた銀行界の取組み」P49
※3 金融広報中央委員会(2022)「金融リテラシー調査2022年」
取材・文:平野 友紀子(Yukiko Hirano)
編集:杜多 真衣(Mai Toda)